夜もすがら月こそ袖に宿りけれ
昔の秋を思ひ出づれば
- 歌の意味
-
一晩中、月こそが涙に濡れた私の袖に宿っていたことだ。昔の秋を思い出していると。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1533
詞書は前の歌に続き「題しらず」
月にわが身を思う一連の三首目である。昔の秋を思い出していると、一晩中、月が涙に濡れた袖に宿っていたと詠む。詞書は前の歌に続き題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清という。鳥羽院に北面の武士として仕えたが、二十三歳で出家し、諸国を旅して多くの歌を残した。原文には作者名がなく、前歌の作者を受ける。
初句「夜もすがら」は、一晩中、の意である。昔を思い続けた夜の長さを示す。
二句「月こそ袖に」の「こそ」は係助詞で、三句の「けれ」で結ぶ。月を取り立てて示す。
三句「宿りけれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。涙に濡れた袖に月が映っていたことをいい、ここで三句切れとなる。
四句「昔の秋を」は、前歌の「いにしへの秋」を受けた語である。
結句「思ひ出づれば」は、已然形に「ば」を添えた確定条件で、思い出していると、の意である。倒置の形で理由を最後に置き、前歌で昔の秋にめぐり逢った心を受けて、その思い出が涙となって袖に月を宿すとしている。
よもすがら:一晩中
やどる:水面などに光や影が映る
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
月を見て心浮かれしいにしへの 秋にもさらにめぐり逢ひぬる
- 次の歌
-
月の色に心を清く染めましや 都を出でぬ我が身なりせば