ふけにける我が身の影を思ふ間に
はるかに月の傾きにける
- 歌の意味
-
年老いてしまった我が身の姿を思っているうちに、夜も更けて、はるかに月が西へ傾いてしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1536
詞書は前の歌に続き「題しらず」
月にわが身を思う一連の六首目である。年老いた我が身の姿を思っているうちに、夜も更けて月がはるかに傾いてしまったと詠む。詞書は前の歌に続き題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清という。鳥羽院に北面の武士として仕えたが、二十三歳で出家し、諸国を旅して多くの歌を残した。原文には作者名がなく、前歌の作者を受ける。
初句「ふけにける」の「ふけ」は、年を取る意の「老け」と、夜が「更け」る意を掛ける。わが身の老いと、夜の深まりとを一語に重ねる。
二句「我が身の影を」の「影」は、姿をいう。月の光の「影」とも響き合う。
三句「思ふ間に」は、思っているうちに、の意である。次歌の三句「思ふ間に」と同じ句で、二首が並んで置かれている。
四句「はるかに月の」は、はるか遠くに、の意で、月が大きく西へ移ったことを示す。
結句「傾きにける」は、完了の「に」と過去の「ける」で、傾いてしまったことだ、と結ぶ。月が西へ傾くことに、わが身の老いの傾きをも重ねている。
ふく:年を取る意の「老く」と、夜が「更く」意を掛ける
かげ:姿。また、光
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
捨つとならば憂き世を厭ふしるしあらん 我見ば曇れ秋の夜の月
- 次の歌
-
ながめして過ぎにしかたを思ふ間に 峰より峰に月は移りぬ