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有明の月よりほかは誰をかは
山路の友と契りおくべき

歌の意味
有明の月よりほかに、いったい誰を、山路を行く友として約束しておけようか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1543

詞書「世を背きなんと思ひ立ちける頃、月を見てよめる」
 月にわが身を思う一連の十三首目で、この一連の終わりの歌である。有明の月よりほかに、誰を山路の友として約束しておけようかと詠む。詞書によれば、出家しようと思い立った頃、月を見て詠んだ歌である。
 作者の「寂超法師」は、俗名を藤原為経という。藤原為忠の子で、兄弟の寂念、寂然とともに出家し、大原に住んだ。藤原隆信の父にあたる。

 初句「有明の」は、夜明けに残る月を示す。
 二句「月よりほかは」は、月よりほかには、の意である。
 三句「誰をかは」の「かは」は反語で、誰を…であろうか、いや誰もいない、の意となる。
 四句「山路の友と」は、山へ入る道の連れとして、の意である。出家して山に入る身の道連れを示す。
 結句「契りおくべき」は、係助詞「かは」を受けて連体形「べき」で結ぶ。出家を思い立った心に、人ではなく有明の月だけを道連れとし、月に身を託す一連を、世を捨てる決意で結んでいる。

やまぢ:山の中の道
ちぎりおく:前もって約束しておく
よをそむく:出家する
作者
寂超
出典
新古今和歌集
前の歌
身の憂さを月やあらぬとながむれば 昔ながらの影ぞ漏り来る
次の歌
都なる荒れたる宿にむなしくや 月に尋ぬる人帰るらん