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思ひやれ何をしのぶとなけれども
都おぼゆる有明の月

歌の意味
思いやってください。何を恋しく思うというわけではないけれど、都が思い出されてならない有明の月の頃の私の心を。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1545

詞書「長月の有明の頃、山里より式子内親王に送れりける」
 山里と都の月を詠む一連の二首目である。何を恋しく思うというわけではないが、有明の月を見ると都が思い出されると、その心を思いやってほしいと詠む。詞書によれば、九月の有明の月の頃、山里から式子内親王に贈った歌である。
 作者の「惟明親王」は、高倉天皇の皇子である。後鳥羽院の兄にあたる。
 この歌には式子内親王の返しがあり、次歌に置かれている。

 初句「思ひやれ」は命令形で、思いやってください、の意となり、ここで初句切れとなる。
 二句「何をしのぶと」は、何を恋しく思うというのでも、の意である。
 三句「なけれども」は、ないけれども、の意で、逆接で下句へつなぐ。
 四句「都おぼゆる」は、都が自然と思い出される、の意である。前歌が都から山里を思ったのと逆に、ここでは山里から都を思う。
 結句「有明の月」は体言止めである。九月の有明の月に都への思いを託し、同じ月を見ているであろう式子内親王に贈っている。

おぼゆ:自然に思われる。思い出される
ながつき:陰暦九月
作者
惟明親王
出典
新古今和歌集
前の歌
都なる荒れたる宿にむなしくや 月に尋ぬる人帰るらん
次の歌
有明の同じながめは君も問へ 都のほかも秋の山里