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入りやらで夜を惜しむ月のやすらひに
ほのぼの明くる山の端ぞ憂き

歌の意味
沈みきらずに、夜を惜しむかのように月がためらっているうちに、ほのぼのと明けてゆく山の端がつらい。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1549

詞書は前の歌に続き「春日社歌合に、暁月の心を」
 暁の月を詠む一連の三首目で、この一連の終わりの歌である。夜を惜しむように沈みきらずにためらう月のうちに、ほのぼのと明けてゆく山の端がつらいと詠む。詞書は前の歌に続き、春日社歌合で暁月の題で詠まれた歌である。
 作者の「藤原保季朝臣」は、鎌倉時代初期の歌人である。
 春日社歌合は、元久元年(1204)に後鳥羽院が春日社に奉納した歌合である。

 初句「入りやらで」は、すっかり沈んでしまわないで、の意である。前歌の遠い山に沈もうとする月を受ける。
 二句「夜を惜しむ月の」は字余りの句で、夜が明けるのを惜しむかのような月をいう。月を擬人化している。
 三句「やすらひに」は、ためらううちに、の意である。
 四句「ほのぼの明くる」は、ほのかに明けてゆく、の意である。夜明けの光が山の端から差してくるさまを示す。
 結句「山の端ぞ憂き」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「憂き」で結ぶ係り結びである。月の沈む山の端が明けてゆくことをつらいとし、暁の月を惜しむ一連を結んでいる。

やすらふ:ためらう。ぐずぐずする
いりやる:すっかり沈んでしまう
作者
藤原保季
出典
新古今和歌集
前の歌
雲をのみつらきものとて明かす夜の 月よ梢にをちかたの山
次の歌
あやしくぞ帰さは月の曇りにし 昔語りに夜や更けにけん