あやしくぞ帰さは月の曇りにし
昔語りに夜や更けにけん
- 歌の意味
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不思議なことに、帰り道には月が曇ってしまった。昔語りをしているうちに、夜が更けてしまったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1550
詞書「月明き夜、定家朝臣に逢ひて侍りけるに、歌の道に志深きことはいつばかりのことにかと尋ね侍りければ、若く侍りし時、西行に久しく相伴ひて聞き習ひ侍りしよし申して、そのかみ申しし事など語り侍りて、帰りてあしたにつかはしける」
昔をしのぶ月を詠む一連の一首目である。不思議なことに帰り道には月が曇った、昔語りに夜が更けたからだろうかと詠む。詞書によれば、月の明るい夜に藤原定家に会い、歌の道に深く志したのはいつ頃からかと尋ねられて、若い頃に西行に長く付き従って教えを受けたことを語り、帰った翌朝に定家に贈った歌である。
作者の「法橋行遍」は、鎌倉時代初期の僧である。法橋の位にあった。
初句「あやしくぞ」は、不思議なことに、の意で、係助詞「ぞ」は三句の「し」で結ぶ。
二句「帰さは月の」の「帰さ」は帰り道をいう。行きには明るかった月を示す。
三句「曇りにし」は、係助詞「ぞ」を受けて過去の「き」の連体形「し」で結ぶ係り結びである。月が曇ったのは、西行をしのぶ涙に目が曇ったためと暗に示し、ここで三句切れとなる。
四句「昔語りに」は、西行の思い出を語ったことをいう。
結句「夜や更けにけん」は、係助詞「や」を受けて連体形「けん」で結ぶ。昔語りに夜が更けたから月が曇ったのかと、とぼけた問いの形で涙を隠し、ここから昔をしのぶ月の歌が続く。
かへさ:帰り道
ほっけう:僧の位の一つ
- 作者
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行遍
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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入りやらで夜を惜しむ月のやすらひに ほのぼの明くる山の端ぞ憂き
- 次の歌
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ふるさとのやどもる月に言問はん 我をば知るや昔住みきと