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すだきけん昔の人は影絶えて
やどもるものは有明の月

歌の意味
大勢集まったであろう昔の人々は姿も絶えて、今この寺を守り、荒れた軒から漏れ入るものは、有明の月ばかりだ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1552

詞書「遍照寺月を見て」
 昔をしのぶ月を詠む一連の三首目である。大勢集まったであろう昔の人々は姿も絶え、今この寺を守り、荒れた軒から漏れ入るのは有明の月ばかりだと詠む。詞書によれば、遍照寺で月を見て詠んだ歌である。
 作者の「平忠盛朝臣」は、平正盛の子である。刑部卿に至り、平清盛の父にあたる。
 遍照寺は、京の西、嵯峨の広沢池のほとりにあった寺で、広沢池は月の名所として知られた。

 初句「すだきけん」の「すだく」は、大勢集まることをいう。過去推量の「けん」で、かつて集まったであろう、の意となる。
 二句「昔の人は」は、かつてこの寺に集った人々をいう。前歌の「昔住みき」を受ける。
 三句「影絶えて」は、姿も見えなくなって、の意である。「影」は人の姿をいい、結句の月の「影」とも響き合う。
 四句「やどもるものは」の「やどもる」は、前歌の二句と同じく、家を「守る」意と、月の光が「漏る」意を掛ける。
 結句「有明の月」は体言止めである。前歌と同じ掛詞を用い、人の絶えた寺を月だけが守るとして、昔の賑わいと今の寂しさを対比している。

すだく:大勢集まる
やどもる:家を「守る」意と、月の光が「漏る」意を掛ける
作者
平忠盛
出典
新古今和歌集
前の歌
ふるさとのやどもる月に言問はん 我をば知るや昔住みきと
次の歌
八重葎茂れる宿は人もなし まばらに月の影ぞすみける