八重葎茂れる宿は人もなし
まばらに月の影ぞすみける
- 歌の意味
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八重葎の生い茂った家には人もいない。まばらになった屋根から差し込む月の光だけが、澄んだ姿でここに住んでいることだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1553
詞書「相知りて侍りける人のもとにまかりたりけるに、その人ほかに住みて、いたう荒れたる宿に月の差し入りて侍りければ」
昔をしのぶ月を詠む一連の四首目で、この一連の終わりの歌である。八重葎の茂った家には人もなく、まばらになった屋根から差し込む月の光だけが澄んで住んでいると詠む。詞書によれば、知人のもとを訪ねたが、その人はほかに移り住んでいて、ひどく荒れた家に月が差し込んでいたので詠んだ歌である。
作者の「前中納言匡房」は、大江成衡の子である。学者として知られ、権中納言、大宰権帥に至った。
上句は、『拾遺和歌集』の恵慶法師の歌「八重葎茂れる宿の寂しきに人こそ見えね秋は来にけり」を踏まえる。
初句「八重葎」は、幾重にも生い茂った葎をいう。荒れた家のさまを示す語で、恵慶法師の歌の初句をそのまま用いる。
二句「茂れる宿は」は、茂っている家は、の意で、存続の「る」を用いる。
三句「人もなし」は、人もいない、と言い切り、ここで三句切れとなる。恵慶法師の歌の「人こそ見えね」を受けている。
四句「まばらに月の」は、屋根が荒れて隙間がまばらになり、そこから差し込む月をいう。
結句「影ぞすみける」の「すみ」は、月の光が「澄む」意と、人に代わって月が「住む」意を掛ける。係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結び、人の住まなくなった家に月だけが住むとして、前の二首の月が家を守る趣を受けて一連を結んでいる。
すむ:「澄む」と「住む」を掛ける
やへむぐら:幾重にも生い茂った葎。荒れた家のさまをいう
むぐら:荒れ地に茂るつる草の総称
- 作者
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大江匡房
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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すだきけん昔の人は影絶えて やどもるものは有明の月
- 次の歌
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かもめゐる藤江の浦の沖つ州に 夜舟いさよふ月のさやけさ