かもめゐる藤江の浦の沖つ州に
夜舟いさよふ月のさやけさ
- 歌の意味
-
かもめのいる藤江の浦の沖の州に、夜の舟がためらうようにとどまっている。その上に照る月の、なんと明るく澄んでいることよ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1554
詞書「題しらず」
海辺の月を詠む一連の一首目である。かもめのいる藤江の浦の沖の州に、夜の舟がためらうようにとどまり、月が明るく澄んでいると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「神祇伯顕仲」は、源顕房の子である。神祇伯に任じられ、歌合を催すなど歌人として活動した。
藤江の浦は播磨の歌枕で、今の兵庫県明石市藤江の海辺である。
初句「かもめゐる」は、かもめのいる、の意である。海辺の景をまず示し、前の一連の荒れた家の月から、海辺の月へと移る。
二句「藤江の浦の」は、播磨の歌枕の藤江の浦を示す。
三句「沖つ州に」の「沖つ州」は、沖にある州をいう。「つ」は「の」の意の古い格助詞である。
四句「夜舟いさよふ」は、夜の舟がためらうように進みかねている、の意である。「いさよふ」は、十六夜の月のためらいにも通う語である。
結句「月のさやけさ」は、名詞で結ぶ体言止めで、月の明るさを詠嘆する。かもめ、州、舟と景を重ね、最後に月を置いて海辺の夜景を描いている。
いさよふ:ためらう。進みかねてとどまる
さやけし:明るく澄んでいる
おきつす:沖にある州
- 作者
-
源顕仲
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
八重葎茂れる宿は人もなし まばらに月の影ぞすみける
- 次の歌
-
難波潟潮干にあさる葦鶴も 月傾けば声の恨むる