ながめよと思はでしもや帰るらん
月待つ波の海人の釣舟
- 歌の意味
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眺めよとは思わないで、帰ってゆくのだろうか。月の出を待つ波の上の、漁師の釣り舟は。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1559
詞書「熊野に詣で侍りしついでに、切目宿にて、海辺眺望といへる心ををのこどもつかうまつりしに」
海辺の月を詠む一連の六首目で、この一連の終わりの歌である。月の出を待つ波の上の漁師の釣り舟は、眺めよとは思わずに帰ってゆくのだろうかと詠む。詞書によれば、熊野に参詣した折、切目の宿で、男官たちが海辺眺望の題で歌を詠んだときの歌である。
作者の「具親」は、源師光の子である。宮内卿の兄にあたり、和歌所の寄人となった。
切目は紀伊の海辺の地で、熊野へ向かう道の宿の一つであった。海辺眺望は、海辺の眺めという題である。
初句「ながめよと」は、眺めよと、の意である。釣り舟が景色の一部として眺められていることを示す。
二句「思はでしもや」は、思わないで、の意に強意の「しも」と疑問の「や」を添える。
三句「帰るらん」は、係助詞「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びである。釣り舟が浦へ帰ってゆくさまを推し量り、ここで三句切れとなる。
四句「月待つ波の」は、月の出を待っている波の、の意である。これから月が出ようとする海の景を示す。
結句「海人の釣舟」は体言止めである。月の出を待つ海に、それと知らずに帰る釣り舟を置き、眺める者の心と海人の暮らしとを対比して、海辺の月の一連を結んでいる。
あま:海で漁をする人
ながむ:物思いにふけりながら見やる
- 作者
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源具親
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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明石潟色なき人の袖を見よ すずろに月も宿るものかは
- 次の歌
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しめおきて今やと思ふ秋山の 蓬がもとにまつむしの鳴く