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浅茅生や袖に朽ちにし秋の霜
忘れぬ夢を吹く嵐かな

歌の意味
浅茅の茂る荒れた庭よ。袖の上で朽ちてしまった秋の霜のような涙の跡よ。忘れられない昔の夢を、吹き覚ます嵐であることよ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1564

詞書「寄風懐旧といふことを」
 秋の景物に寄せて述懐する一連の五首目である。浅茅の茂る荒れた庭に、袖で朽ちた秋の霜のような涙の跡を思い、忘れられない昔の夢を吹き覚ます嵐を詠む。詞書によれば、寄風懐旧の題で詠まれた歌である。
 作者の「左衛門督通光」は、内大臣源通親の子である。左衛門督を経て、のちに太政大臣に至った。
 寄風懐旧は、風に寄せて昔をしのぶという題である。

 初句「浅茅生や」の「浅茅生」は、丈の低い茅の茂った所をいい、荒れた庭を示す。「や」は詠嘆の間投助詞で、初句で切れる。
 二句「袖に朽ちにし」は、袖の上で朽ちてしまった、の意である。昔をしのぶ涙に濡れ続けた袖を示す。
 三句「秋の霜」は、袖に置く霜で、凍った涙を思わせる。ここで三句切れとなる。
 四句「忘れぬ夢を」は、忘れられない昔の夢をいう。題の懐旧を受ける。
 結句「吹く嵐かな」は、題の風を受け、昔の夢を吹き覚ます嵐を詠嘆する。前歌の寝覚めの涙を受けて、夢を破る嵐を置き、次歌も同じ題で夢の世を詠む。

あさぢふ:丈の低い茅の茂った所
くつ:朽ちる。腐ってだめになる
作者
源通光
出典
新古今和歌集
前の歌
風そよぐ篠の小笹のかりの世を 思ふ寝覚めに露ぞこぼるる
次の歌
葛の葉にうらみにかへる夢の世を わすれがたみの野辺の秋風