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葛の葉にうらみにかへる夢の世を
わすれがたみの野辺の秋風

歌の意味
葛の葉が風に裏返るように、恨みへと立ち返ってしまう夢のようなはかない世を、忘れがたくさせる形見として、野辺に秋風が吹いている。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1565

詞書は前の歌に続き「寄風懐旧といふことを」
 秋の景物に寄せて述懐する一連の六首目である。葛の葉が風に裏返るように恨みに立ち返る夢の世を、忘れがたくさせる形見として野辺の秋風が吹くと詠む。詞書は前の歌に続き、寄風懐旧の題で詠まれた歌である。
 作者の「皇太后宮大夫俊成女」は、藤原盛頼の娘で、祖父の藤原俊成の養女となった。源通具の妻となり、後鳥羽院に仕えた。
 寄風懐旧は、風に寄せて昔をしのぶという題である。葛の葉は風に翻って白い裏を見せることから、「裏見」と「恨み」を掛けて詠まれてきた。

 初句「葛の葉に」は、秋風に翻る葛の葉を示す。
 二句「うらみにかへる」の「うらみ」は、葛の葉の「裏見」と「恨み」を掛ける。葉が風に裏返ることと、心が恨みに立ち返ることとを重ねる。
 三句「夢の世を」は、夢のようにはかない世をいう。前歌の「忘れぬ夢」を受けている。
 四句「わすれがたみの」は、「忘れ難み」と「形見」を掛ける。忘れがたい思いと、昔をしのぶ形見とを一語に重ねる。
 結句「野辺の秋風」は体言止めである。題の風を秋風として置き、前歌の嵐と同じく昔をしのばせる風を詠む。葛の葉を翻す秋風に、過ぎた世への恨みと懐かしさを託している。

うらみ:葛の葉の「裏見」と、「恨み」を掛ける
わすれがたみ:「忘れ難み」と「形見」を掛ける
作者
藤原俊成女
出典
新古今和歌集
前の歌
浅茅生や袖に朽ちにし秋の霜 忘れぬ夢を吹く嵐かな
次の歌
白露は置きにけらしな宮城野の 本荒の小萩末たわむまで