山里に葛はひかかる松垣の
ひまなくものは秋ぞ悲しき
- 歌の意味
-
山里で葛が這いかかっている松の垣根に隙間もないように、絶え間もなく物悲しいのは秋であることよ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1569
詞書「題しらず」
秋の景物に寄せて述懐する一連の十首目である。山里で葛の這いかかった松の垣根に隙間がないように、絶え間なく物悲しいのは秋だと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「曽祢好忠」は、平安時代中期の歌人である。丹後掾を務めたことから曽丹とも呼ばれ、新しい歌風で知られた。
初句「山里に」は、人里離れた山中の住まいを示す。
二句「葛はひかかる」は、葛が這いかかっている、の意である。本巻の第千五百六十五首の「葛の葉」に続き、秋の葛を詠む。
三句「松垣の」は、松の垣根をいう。初句から三句までが、葛が這いかかって隙間のない垣を示し、四句の「ひまなく」を導く序詞となる。
四句「ひまなくものは」は、隙間なく、絶え間なく、の意で、垣の隙間のなさと、物思いの絶え間のなさとを重ねる。
結句「秋ぞ悲しき」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「悲しき」で結ぶ係り結びである。序詞の山里の景から秋の悲しみへと転じ、秋の景物に寄せる述懐を続けている。
まつがき:松の垣根
ひま:すき間。絶え間
- 作者
-
曽祢好忠
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
白露は分きても置かじ女郎花 心からにや色の染むらん
- 次の歌
-
百年の秋の嵐は過ぐしきぬ いづれの暮れの露と消えなん