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山川の岩行く水も氷して
ひとり砕くる峰の松風

歌の意味
山川の岩の間を流れてゆく水も凍りついて、今ひとり砕けるように音を立てているのは、峰を吹く松風だ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1577

詞書「題しらず」
 冬を詠む一連の一首目である。山川の岩の間を流れる水も凍りつき、今ひとり砕けるように音を立てているのは峰の松風だと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。

 初句「山川の」は、山の中を流れる川をいう。
 二句「岩行く水も」は、岩の間を流れてゆく水をいう。ふだんは岩に砕けて音を立てる流れである。
 三句「氷して」は、凍りついて、の意である。冬の訪れを示し、ここから冬を詠む歌が続く。
 四句「ひとり砕くる」は、ひとり砕けるように音を立てる、の意である。本来岩に砕けて鳴る水が凍って音を失い、代わりに松風だけが砕けるように鳴るとする。
 結句「峰の松風」は体言止めである。水の音から松風の音へと、冬山の音の移り変わりをとらえている。

いはゆく:岩の間を流れてゆく
くだく:砕ける。細かく割れる
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
頼もしな野の宮人の植うる花 時雨るる月にあへずなるとも
次の歌
朝ごとに汀の氷踏み分けて 君に仕ふる道ぞかしこき