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ほどもなく覚めぬる夢の中なれど
その世に似たる花の色かな

歌の意味
あっという間に覚めてしまった夢のような御在位の間であったけれど、その御代の頃に似た花の色であることよ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1584

詞書「花山院下り居給ひて、又の年、仏名に、削り花につけて申し侍りける」
 冬を詠む一連の八首目である。すぐに覚めた夢のような御在位の間ではあったが、その御代に似た花の色であると詠む。詞書によれば、花山院が退位した翌年の仏名会に、削り花に添えて申し上げた歌である。
 作者の「前大納言公任」は、関白藤原頼忠の子である。大納言に至り、『和漢朗詠集』を撰んだ。
 仏名は仏名会のことで、陰暦十二月に三日間、宮中などで三世の諸仏の名を唱えて一年の罪を懺悔する法会である。削り花は、木を削って花の形に作った造花で、仏前に供えた。花山天皇は在位二年ほどで出家し、退位した。
 この歌には御形宣旨の返しがあり、次歌に置かれている。

 初句「ほどもなく」は、間もなく、あっという間に、の意である。花山院の在位の短さを示す。
 二句「覚めぬる夢の」は、覚めてしまった夢の、の意である。短い在位を夢にたとえている。
 三句「中なれど」は、その間ではあるけれど、の意である。
 四句「その世に似たる」は、その御代に似た、の意である。在位の頃の仏名会を思い起こさせる。
 結句「花の色かな」は、詠嘆の「かな」で結ぶ。前歌で朱雀院が削り花に昔の心地を見たのと同じく、削り花に過ぎた御代の面影を見出し、花山院の短い御代をしのんでいる。

おりゐる:天皇が位を退く
作者
藤原公任
出典
新古今和歌集
前の歌
時過ぎて霜に消えにし花なれど 今日は昔の心地こそすれ
次の歌
見し夢をいづれの世ぞと思ふ間に 折を忘れぬ花の悲しさ