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白波の浜松が枝の手向けぐさ
幾代までにか年の経ぬらん

歌の意味
白波の寄せる浜の松の枝に結ばれた手向けの品は、いったいどれほどの代を経て、年月を重ねてきたのだろうか。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1588

詞書「朱鳥五年九月紀伊国に行幸時」
 旅の道中を詠む古歌の一連の一首目で、巻第十七の巻頭歌である。白波の寄せる浜の松の枝に結ばれた手向けの品は、どれほどの年を経てきたのかと思いやる。詞書によれば、紀伊国への行幸に従った折の歌である。
 作者の「河島皇子」は、天智天皇の皇子である。天武天皇の代に、『帝紀』など古い記録の編纂に加わった。
 朱鳥五年は持統天皇四年にあたり、この年の九月に持統天皇が紀伊国へ行幸したことが『日本書紀』に見える。
 『万葉集』巻一に河島皇子の作として載り、山上憶良の作とする異伝も注記されている。

 初句「白波の」は、白波の寄せる、の意で、海辺の場をまず示す。雑歌中の巻が、海辺の景から始まることになる。
 二句「浜松が枝の」は、浜辺に生える松の枝の、の意である。「が」「の」を重ねて、次の「手向けぐさ」へ連ねていく。
 三句「手向けぐさ」は、道中の無事を祈って神に手向ける品で、ここでは松の枝に結び付けた幣をいう。
 四句「幾代までにか」の「か」は疑問の係助詞で、どれほどの代を経たのかと、はるかな時の長さを問う。
 結句「年の経ぬらん」は、係助詞「か」を受けて現在推量の助動詞「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。完了の「ぬ」と合わせ、松に結ばれた手向けの古さを推し量っている。次歌の第千五百八十九首も『万葉集』の歌で、古歌二首が巻頭に並ぶ。

たむけぐさ:旅の無事を祈って神に供える品。幣
ぬさ:神に祈るときに供える、布や紙を切ったもの
ぎやうかう:天皇が出かけること
作者
河島皇子
出典
新古今和歌集
前の歌
おほかたに過ぐる月日とながめしは 我が身に年の積もるなりけり
次の歌
山城の岩田の小野の柞原 見つつや君が山路越ゆらん