芦の屋の灘の塩焼きいとまなみ
黄楊の小櫛もささず来にけり
- 歌の意味
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芦屋の灘で塩を焼く女は暇がないので、黄楊の小櫛も髪に挿さずにやって来てしまった。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1590
詞書は前の歌に続き「題しらず」
海人の塩焼きと焚く火を詠む一連の一首目である。芦屋の灘で塩を焼く女は暇がないので、黄楊の小櫛も挿さずにやって来たと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「在原業平朝臣」は、平城天皇の皇子阿保親王の子である。六歌仙の一人で、『伊勢物語』の主人公に擬せられる。
『伊勢物語』第八十七段に、芦屋の里を詠んだ昔の歌として引かれる。
芦屋の灘は摂津国の海辺で、現在の兵庫県芦屋市のあたりである。塩を焼く海人の住む浦として詠まれる。
初句「芦の屋の」は、摂津国の地名、芦屋をいう。
二句「灘の塩焼き」は、灘で塩を焼く人、ここでは海人の女をいう。「塩焼き」を人とする言い方である。
三句「いとまなみ」は、暇がないので、の意である。形容詞「なし」の語幹に「み」が付き、原因や理由を表す。
四句「黄楊の小櫛も」は、黄楊で作った小さな櫛である。「も」によって、身なりを整える櫛さえも、と働きぶりの忙しさを示す。
結句「ささず来にけり」は、櫛を挿さずにやって来てしまった、の意である。「けり」は気づきの詠嘆を表す。
しほやき:海水を煮詰めて塩を作ること。また、それをする人
つげ:材が堅く、櫛などを作る木
なだ:波の荒い海
- 作者
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在原業平
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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山城の岩田の小野の柞原 見つつや君が山路越ゆらん
- 次の歌
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晴るる夜のはしか河辺の蛍かも わが住む方の海人の焚く火か