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難波女の衣干すとて刈りて焚く
芦火の煙立たぬ日ぞなき

歌の意味
難波の女が衣を干すといって、芦を刈って焚く芦火の煙が立たない日はない。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1593

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 海人の塩焼きと焚く火を詠む一連の四首目である。難波の女が衣を干すといって、芦を刈って焚く芦火の煙が立たない日はないと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「貫之」は、紀望行の子で、『古今和歌集』の撰者の一人である。仮名序を書き、『土佐日記』を著した。
 難波は摂津国の地で、現在の大阪市のあたりである。芦の生い茂る浦として、芦とともに詠まれることが多い。

 初句「難波女の」は、難波に住む女の、の意である。前歌の志賀の海人から、場所を摂津の難波へ移す。
 二句「衣干すとて」は、衣を干すといって、の意である。濡れた衣を乾かすために火を焚くという、暮らしの一こまを示す。
 三句「刈りて焚く」は、芦を刈り取ってそれを焚く、の意である。本巻の第千五百九十一首の結句「海人の焚く火か」と同じく、「焚く」の語を用いている。
 四句「芦火の煙」は、芦を燃やす火の煙である。前歌の「塩焼く煙」を受けて、煙が一連を結ぶ。第千五百九十首の「芦の屋」とも、芦の語が響き合う。
 結句「立たぬ日ぞなき」は、係助詞「ぞ」を受けて形容詞「なし」の連体形「なき」で結ぶ係り結びである。煙が立たない日はない、と打消しを重ねて、日々絶えない難波の暮らしを描く。前歌の煙が「立ちは上らで」とあったのに対し、この歌では毎日煙が立つことをいう。

あしび:芦を燃やしてたく火
なにはめ:難波に住む女
作者
紀貫之
出典
新古今和歌集
前の歌
志賀の海人の塩焼く煙風をいたみ 立ちは上らで山にたなびく
次の歌
年経れば朽ちこそまされ橋柱 昔ながらの名だに変はらで