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沖つ風夜半に吹くらし難波潟
暁かけて波ぞ寄すなる

歌の意味
沖の風が夜中に吹いているらしい。難波潟では、明け方にかけて波の寄せる音が聞こえる。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1597

詞書「題しらず」
 難波潟の波を詠む一首である。沖の風が夜中に吹いたらしく、難波潟では明け方にかけて波の寄せる音が聞こえると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「権中納言定頼」は藤原定頼である。藤原公任の子で、権中納言に至った。
 難波潟は摂津国の難波の入り江で、現在の大阪湾の奥にあたる。芦や澪標とともに詠まれる歌枕である。

 初句「沖つ風」は、沖の風、の意である。「つ」は「の」にあたる古い格助詞である。
 二句「夜半に吹くらし」は、夜中に吹いているらしい、の意である。推定の助動詞「らし」で句が切れる二句切れで、波の音から沖の風を推し量っている。
 三句「難波潟」は、摂津国の入り江である。長柄の橋の一連に続き、難波の海辺が舞台となる。
 四句「暁かけて」は、明け方にかけて、の意である。夜半から暁へと時が移るなかで、波の音が続いていることを示す。
 結句「波ぞ寄すなる」は、係助詞「ぞ」を受けて、音によって推定する助動詞「なり」の連体形「なる」で結ぶ係り結びである。姿は見えず、波の音だけが聞こえる夜明け前の海辺を描く。

よは:夜中
あかつき:夜明け前のまだ暗いころ
みをつくし:船の通り道を示すために立てた杭
作者
藤原定頼
出典
新古今和歌集
前の歌
朽ちにける長柄の橋を来て見れば 芦の枯れ葉に秋風ぞ吹く
次の歌
須磨の浦の凪ぎたる朝はめもはるに 霞にまがふ海人の釣舟