古典和歌stream

海人小舟苫吹きかへす浦風に
ひとりあかしの月をこそ見れ

歌の意味
海人の小舟の苫を吹き返す浦風の中で、ひとり夜を明かしながら明石の月を見ることだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1602

詞書「明石浦を詠める」
 海辺の浦を詠む一連の一首目である。海人の小舟の苫を浦風が吹き返すなか、ひとり夜を明かして明石の月を見ると詠む。詞書によれば、明石の浦を題として詠んだ歌である。
 作者の「俊頼朝臣」は、源経信の子で、白河院の命により『金葉和歌集』を撰んだ。
 明石の浦は播磨国の海辺で、現在の兵庫県明石市にあたる。月の名所として知られ、須磨と並べて詠まれることが多い。

 初句「海人小舟」は、海人の乗る小さな舟である。前の須磨の一連から西へ進み、明石の浦に場を移す。
 二句「苫吹きかへす」は、舟を覆う苫を吹きめくる、の意である。
 三句「浦風に」は、浦を吹く風によって、の意である。本巻の第千五百九十九首の須磨の秋風と同じく、海辺の風が歌の景を動かしている。
 四句「ひとりあかしの」には、ひとり夜を明かす、の意と、地名の「明石」が掛けられている。
 結句「月をこそ見れ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「見れ」で結ぶ係り結びである。ひとり見る月を強く示し、旅寝の孤独を描く。

とま:菅や茅を編んで作ったむしろ。舟や小屋を覆う
あかす:夜を明かす意と、地名の明石を掛ける
作者
源俊頼
出典
新古今和歌集
前の歌
人住まぬ不破の関屋の板びさし 荒れにし後はただ秋の風
次の歌
和歌の浦を松の葉越しに眺むれば 梢に寄する海人の釣舟