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和歌の浦を松の葉越しに眺むれば
梢に寄する海人の釣舟

歌の意味
和歌の浦を松の葉越しに眺めると、松の梢に寄せてくるように見える海人の釣舟であることよ。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1603

詞書「眺望の心を詠める」
 海辺の浦を詠む一連の二首目である。和歌の浦を松の葉越しに眺めると、海人の釣舟が梢に寄せるように見えると詠む。詞書によれば、眺望を題として詠んだ歌である。
 作者の「寂蓮法師」は、俗名を藤原定長という。藤原俊成の甥で、その養子となった。『新古今和歌集』の撰者に選ばれたが、完成を見ずに没した。
 和歌の浦は紀伊国の海辺で、現在の和歌山市にあたる。玉津島の神が祀られ、和歌の神の地としても尊ばれた。

 初句「和歌の浦を」は、眺める場を和歌の浦に定める。
 二句「松の葉越しに」は、松の葉を透かして、の意である。手前の松と遠くの海とを重ねる構図が示される。
 三句「眺むれば」は、已然形に「ば」が付き、眺めると、の意となる。
 四句「梢に寄する」は、梢に寄せてくる、の意である。遠くの舟が松の梢のあたりに浮かぶように見える、遠近の重なりをとらえる。
 結句「海人の釣舟」は体言止めである。本巻の第千五百九十八首も同じ結句「海人の釣舟」で結び、霞にまぎれる舟に対して、ここでは梢に寄る舟が描かれる。

こずゑ:木の幹や枝の先
はごし:葉を隔てて向こうを見ること
作者
寂蓮
出典
新古今和歌集
前の歌
海人小舟苫吹きかへす浦風に ひとりあかしの月をこそ見れ
次の歌
水の江の吉野の宮は神さびて 齢たけたる浦の松風