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うち寄する波の声にてしるきかな
吹上の浜の秋の初風

歌の意味
打ち寄せる波の音で、はっきりと分かることだ。吹上の浜に吹く秋の初風が。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1609

詞書「教長教名所歌詠ませ侍りけるに」
 諸国の浦を詠む一連の一首目である。打ち寄せる波の音によって、吹上の浜に秋の初風が吹いたことがはっきりと分かると詠む。詞書によれば、教長が名所を題として歌を詠ませた折の歌である。
 作者の「祝部成仲」は、日吉社の禰宜を務めた神官である。
 詞書の「教長」は藤原教長で、崇徳院に近く仕えた歌人である。
 吹上の浜は紀伊国の海辺で、現在の和歌山市の紀ノ川河口付近にあたる。浜の名から、風とともに詠まれることが多い。

 初句「うち寄する」は、打ち寄せる、の意である。「うち」は語調を整える接頭語である。
 二句「波の声にて」は、波の音によって、の意である。本巻の第千五百九十九首の「声うち添ふる須磨の浦波」と同じく、波の音を「声」ととらえている。
 三句「しるきかな」は、はっきりと分かることだ、の意である。「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句が切れる三句切れとなる。
 四句「吹上の浜の」は、紀伊国の吹上の浜の、の意である。浜の名の「吹上」が、秋風の吹く景とよく響き合う。
 結句「秋の初風」は体言止めで、倒置により、何がはっきり分かるのかを結句で明かしている。目に見えない秋の訪れを、耳でとらえた歌である。

はつかぜ:その季節に初めて吹く風
ねぎ:神社に仕える神職の一つ
作者
祝部成仲
出典
新古今和歌集
前の歌
住吉の松はまつとも思ほえで 君が千歳のかげぞ恋しき
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沖つ風夜寒になれや田子の浦の 海人の藻塩火焚きまさるらん