吉野山やがて出でじと思ふ身を
花散りなばと人や待つらん
- 歌の意味
-
吉野山にこのまま籠って出るまいと思っている私を、花が散ったら帰って来るだろうと、都の人は待っているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌中 1619
詞書「題しらず」
吉野の山に籠ることを詠む一連の二首目である。吉野山にそのまま籠って出るまいと思う自分を、花が散れば帰るだろうと都の人は待っているのだろうかと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家した。
初句「吉野山」は、場を吉野山に定める。前歌の結句「みよしのの山」を受けて、吉野山で始まる。
二句「やがて出でじと」は、このまま出るまいと、の意である。「やがて」はそのまま、の意で、「じ」は打消しの意志を表す。
三句「思ふ身を」は、そう思っているわが身を、の意である。
四句「花散りなばと」は、花が散ってしまったら、の意である。前歌が花のためではないと打ち消したのに対し、ここでは都の人が花見に来たものと思っているさまを描く。
結句「人や待つらん」は、係助詞「や」を受けて「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。帰りを待つ都の人を思いやり、出家の決意とのずれを示す。
いづ:出る。ここでは山を出て都へ帰ること
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
花ならでただ柴の戸をさして思ふ 心の奥もみよしのの山
- 次の歌
-
厭ひてもなほ厭はしき世なりけり 吉野の奥の秋の夕暮