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身をばかつをしほの山と思ひつつ
いかに定めて人の入りけん

歌の意味
我が身を一方では惜しいと思いながら、どのように心を決めて、あなたはこの小塩の山に入ったのだろうか。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1629

詞書「返し」
 大原の里を詠む贈答の二首目で、前歌への返歌である。一方ではわが身を惜しいと思いながら、どのように心を定めて、この小塩の山に入ったのだろうかと問いかける。
 作者の「能宣朝臣」は、大中臣頼基の子で、伊勢神宮の祭主を務めた。梨壺の五人の一人として『後撰和歌集』の撰に加わった。
 小塩山は大原野の西にある山で、大原野とともに詠まれる。

 初句「身をばかつ」は、わが身を一方では、の意である。「かつ」は、一方では、の意を表す。
 二句「をしほの山と」の「をしほ」には、身を「惜し」と思う意と、地名の「小塩」が掛けられている。前歌の「おほはら」の掛詞に、同じく地名の掛詞で応じている。
 三句「思ひつつ」は、思いながら、の意である。「つつ」は動作の継続を表す。
 四句「いかに定めて」は、どのように心を決めて、の意である。身を惜しむ思いと、世を捨てる決意との間の迷いを思いやる。
 結句「人の入りけん」は、あなたは山に入ったのだろう、の意である。過去推量の「けん」で、相手の決心を推し量って結ぶ。前歌の「来しかども」を受け、山に入ったその決意を問い返している。

をしほ:惜しい意と、地名の小塩を掛ける
作者
大中臣能宣
出典
新古今和歌集
前の歌
世の中を背きにとては来しかども なほ憂きことはおほはらの里
次の歌
苔の庵さして来つれど君まさで 帰る深山の道の露けさ