荒れ果てて風もさはらぬ苔の庵に
我はなくとも露は漏りけん
- 歌の意味
-
荒れ果てて風も遮らない苔の庵に、私はいなくても、露だけは漏れ落ちていたことだろう。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌中 1631
詞書「聖、後に見て返し」
苔の庵を詠む贈答の二首目で、前歌への返歌である。荒れ果てて風も防げない苔の庵には、自分はいなくとも露は漏れていただろうと詠む。詞書によれば、庵の主である聖が、後に書きつけを見て返した歌である。
原文に作者名の記載はない。詞書から庵の主である聖の返歌とわかるが、その名は伝わらない。
初句「荒れ果てて」は、すっかり荒れてしまって、の意である。
二句「風もさはらぬ」は、風も遮らない、の意である。本巻の第千六百二十七首の結句「風もさはらず」と同じく、苔の衣や庵の粗末さを言い表す句である。
三句「苔の庵に」は、前歌の初句「苔の庵」をそのまま受けている。
四句「我はなくとも」は、私はいなくても、の意である。前歌の「君まさで」に答えている。
結句「露は漏りけん」は、露は漏れていただろう、の意である。過去推量の「けん」で結ぶ。前歌の「道の露けさ」を受け、主は留守でも庵には露が漏れて迎えただろうと、客の涙の露に応じている。
もる:すきまからこぼれ落ちる
さはる:さえぎる。妨げる
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
苔の庵さして来つれど君まさで 帰る深山の道の露けさ
- 次の歌
-
山深くさこそ心は通ふとも 住まで哀れを知らんものかは