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世を背く方はいづくにありぬべし
大原山は住みよかりきや

歌の意味
世を背いて住む所は、どこにでもあるにちがいない。それなのにあなたが選んだ大原山は、住みよかったのですか。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1640

詞書「少将井の尼大原より出でたりと聞きて遣はしける」
 世を背く山を詠む一連の二首目である。世を背く所はどこにでもあるだろうに、大原山は住みよかったのかと問いかける。詞書によれば、少将井の尼が大原から出てきたと聞いて贈った歌である。
 作者の「和泉式部」は、大江雅致の娘で、中宮彰子に仕えた。和泉守橘道貞の妻となったことから、この名で呼ばれた。
 大原は山城国の地で、現在の京都市左京区にあたる。世を逃れた人の隠れ住む里として知られた。次歌の第千六百四十一首は、少将井の尼の返歌である。

 初句「世を背く」は、前歌の初句と同じ句で始まり、世を捨てることをいう。
 二句「方はいづくに」は、方法や場所はどこに、の意である。
 三句「ありぬべし」は、きっとあるにちがいない、の意である。ここで句が切れる三句切れとなる。
 四句「大原山は」は、尼が住んでいた大原山を主題として取り立てる。
 結句「住みよかりきや」は、住みよかったのか、の意である。過去の「き」に疑問の「や」が付き、大原を出てきた尼に、あえて住み心地を問う。前歌の奥山が物思いの場であったのを受け、世を背く所も住みにくいのではないかと問いかけている。

そむく:世を捨てる。出家する
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
前の歌
世を背く所とか聞く奥山は もの思ひにぞ入るべかりける
次の歌
思ふことおほはら山の炭竈は いとどなげきの数をこそ積め