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枝折せでなほ山深く分け入らん
憂きこと聞かぬ所ありやと

歌の意味
帰り道のしるしの枝折もせずに、さらに山深く分け入ろう。つらいことを聞かないですむ所があるかと思って。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1643

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 山里の奥を詠む一連の二首目である。帰り道の目印の枝折もせず、つらいことを聞かない所があるかと、さらに山深く分け入ろうと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は前歌に続き西行である。俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家した。

 初句「枝折せで」は、枝折をしないで、の意である。帰り道の目印を付けないことで、二度と戻らない決意を示す。
 二句「なほ山深く」は、さらに山深く、の意である。前歌の山里からさらに奥へと向かう。本巻の第千六百三十二首の初句「山深く」とも響き合う。
 三句「分け入らん」は、分け入ろう、の意である。意志の「ん」で句が切れる三句切れとなる。
 四句「憂きこと聞かぬ」は、つらいことを聞かない、の意である。
 結句「所ありやと」は、所があるかと思って、の意である。倒置によって分け入る目的を結句で示す。世を背く山にもなお憂いがあったという前の一連を受け、さらに奥を求める心を詠む。

しをり:山道で木の枝を折って道しるべとすること
わけいる:草木を分けて入る
作者
西行
出典
新古今和歌集
前の歌
誰住みてあはれ知るらん山里の 雨降りすさむ夕暮の空
次の歌
かざし折る三輪の繁山かき分けて あはれとぞ思ふ杉立てる門