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わが世をば今日か明日かと待つかひの
涙の滝といづれ高けん

歌の意味
自分が世に出る時を、今日か明日かと待つ甲斐もなく流す涙の滝と、この布引の滝と、どちらが高いだろうか。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1651

詞書「布引の滝見にまかりて」
 布引の滝を詠む一連の一首目である。世に出る時を今日か明日かと待ちながら、その甲斐もなく流す涙の滝と、この滝とどちらが高いだろうかと詠む。詞書によれば、布引の滝を見に出かけた折の歌である。
 作者の「中納言行平」は在原行平である。阿保親王の子で、業平の兄にあたる。中納言に至った。
 『伊勢物語』第八十七段に、布引の滝を見に行った折、衛府の督であった男の兄が詠んだ歌として載る。本巻の第千五百九十一首と同じ段の歌である。
 布引の滝は摂津国の滝で、現在の神戸市中央区の生田川の上流にある。白い布を引いたような姿から、この名がある。

 初句「わが世をば」は、自分が世に栄える時を、の意である。
 二句「今日か明日かと」は、今日か明日かと、の意で、待ち遠しい思いを示す。
 三句「待つかひの」は、待つ甲斐の、の意である。甲斐もなく流す涙へと続く。
 四句「涙の滝と」は、滝のように流れる涙と、の意である。目の前の布引の滝と、自分の涙とを並べる。
 結句「いづれ高けん」は、どちらが高いだろうか、の意である。推量の「けん」で問いかけ、不遇の涙の多さを滝の高さに競わせている。前の一連の川の流れを受け、流れ落ちる滝へと移る。

かひ:しただけの効き目。甲斐
作者
在原行平
出典
新古今和歌集
前の歌
もののふの八十うぢ川の網代木に いさよふ波のゆくへ知らずも
次の歌
水上の空に見ゆるは白雲の たつにまがへる布引の滝