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昔聞く天の河原を尋ね来て
跡なき水を眺むばかりぞ

歌の意味
昔の話に聞く天の河原を訪ねて来て、今は跡形もない水をただ眺めるばかりである。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1654

詞書「天の河原を過ぐとて」
 天の川を詠む一連の一首目である。昔の話に聞く天の河原を訪ねて来て、跡もない水を眺めるばかりだと詠む。詞書によれば、天の河原を通り過ぎた折の歌である。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。九条兼実の子で、摂政太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を書いた。
 天の河原は河内国交野の地で、現在の大阪府枚方市のあたりである。『伊勢物語』第八十二段に、惟喬親王の交野の狩に従った男が「狩り暮らしたなばたつめに宿からむ天の河原に我は来にけり」と詠んだ話が載る。

 初句「昔聞く」は、昔の話として聞いている、の意である。『伊勢物語』の惟喬親王の狩の話を指す。
 二句「天の河原を」は、河内国交野の天の河原を、の意である。七夕の天の川と同じ名をもつ地である。
 三句「尋ね来て」は、訪ねて来て、の意である。
 四句「跡なき水を」は、昔の人々の跡も残らない川の水を、の意である。流れ去る水に、過ぎ去った昔を重ねる。
 結句「眺むばかりぞ」は、ただ眺めるばかりである、の意である。係助詞「ぞ」で結び、昔を偲ぶほかない思いを示す。前の一連の滝から、天の河原の流れへと移る。

かはら:川辺の石や砂の多い所
たなばたつめ:織女星。織姫
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
前の歌
久方の天つ乙女が夏衣 雲居にさらす布引の滝
次の歌
天の川通ふ浮木に言問はん 紅葉の橋は散るや散らずや