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定めなき名には立てれど飛鳥川
はやく渡りし瀬にこそありけれ

歌の意味
定めのない川という評判は立っているけれども、飛鳥川は、昔渡った時と同じ、流れの速い瀬のままであったことだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1657

詞書「天暦御時屏風に国々の所の名を書かせさせ給ひけるに飛鳥川」
 飛鳥川を詠む一首である。定めのない川という名は立っているが、飛鳥川は昔渡ったのと同じ瀬のままであったと詠む。詞書によれば、村上天皇の天暦の頃、屏風に諸国の名所を描かせた折に、飛鳥川を題として詠まれた歌である。
 作者の「中務」は、宇多天皇の皇子敦慶親王と歌人伊勢の娘である。三十六歌仙の一人である。
 飛鳥川は大和国の川である。『古今和歌集』のよみ人しらずの歌「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」以来、移り変わりの激しいものの象徴として詠まれる。

 初句「定めなき」は、定まることのない、の意である。『古今和歌集』の歌によって広まった飛鳥川の評判をいう。
 二句「名には立てれど」は、評判は立っているけれども、の意である。「立てれ」は「立てり」の已然形で、「ど」は逆接を表す。
 三句「飛鳥川」は、評判の主である飛鳥川を示す。
 四句「はやく渡りし」の「はやく」には、以前に、の意と、流れが速く、の意が掛けられている。
 結句「瀬にこそありけれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。淵と瀬が入れ替わるという評判に対し、昔と変わらない瀬であったと理を差し向けている。前歌の瀬田の長橋の久しさと、変わらないものを詠む点で響き合う。

はやく:以前に、の意と、流れが速く、の意を掛ける
ふち:川の水が深くよどんだ所
作者
中務
出典
新古今和歌集
前の歌
真木の板も苔むすばかりなりにけり 幾世経ぬらん瀬田の長橋
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山里にひとり眺めて思ふかな 世に住む人の心強さを