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樒摘む山路の露に濡れにけり
暁起きの墨染の袖

歌の意味
仏に供える樒を摘む山道の露に濡れてしまった。暁に起きて勤める、墨染の衣の袖は。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1666

詞書は前の歌に続き「百首歌奉りしに山家の心を」
 山の住まいと山路を詠む一連の三首目である。暁に起きて樒を摘みに行く山路の露に、墨染の袖が濡れたと詠む。詞書によれば、百首歌を奉った折に、山家を題として詠んだ歌である。
 作者の「小侍従」は、石清水八幡宮の別当紀光清の娘である。「待宵の小侍従」と呼ばれた。

 初句「樒摘む」は、仏前に供える樒を摘む、の意である。
 二句「山路の露に」は、山道の露に、の意である。本巻の第千六百六十四首の「知らぬ山路の」と同じく、山路の露を詠む。
 三句「濡れにけり」は、濡れてしまったことだ、の意である。「けり」は気づきの詠嘆で、ここで句が切れる三句切れとなる。
 四句「暁起きの」は、暁に起きて勤行する、の意である。
 結句「墨染の袖」は体言止めで、僧衣の袖を置いて結ぶ。前歌の「苔深き袖」に続いて、同じく袖で結ぶ。露に濡れる袖に、勤めの暮らしのしみじみとした思いを重ねている。

しきみ:仏前に供える常緑の木
すみぞめ:墨で染めたような黒い色。僧衣
あかつきおき:夜明け前に起きること
作者
小侍従
出典
新古今和歌集
前の歌
今は我松の柱の杉の庵に 閉づべきものを苔深き袖
次の歌
忘れじの人だに訪はぬ山路かな 桜は雪に降り変はれども