- 歌の意味
-
昔見た庭の小さな松に年月が積もって大きくなり、今は嵐の音をその梢に聞くことだ。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌中 1679
詞書は前の歌に続き「題しらず」
古びた野と里を詠む一連の五首目である。昔見た庭の小松が年を経て大きくなり、今は嵐の音を梢に聞くと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は前歌に続き西行である。俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家した。
初句「昔見し」は、昔見た、の意である。前歌の「さらに昔を」を受け、実際に見た昔を呼び起こす。
二句「庭の小松に」は、庭の小さな松に、の意である。
三句「年古りて」は、年月が経って古びて、の意である。
四句「嵐の音を」は、嵐の吹く音を、の意である。小松が大木となり、梢で嵐が鳴るほどになったことをいう。
結句「梢にぞ聞く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「聞く」で結ぶ係り結びである。小松の成長によって過ぎ去った歳月の長さを知る。本巻の第千六百三十四首の、浅い片岡が深い山路となった歌と同じく、木々の成長に歳月を見る。
こまつ:小さな松
ふる:年を経て古くなる
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
茂き野をいく一群に分けなして さらに昔をしのびかへさん
- 次の歌
-
住み慣れしわが故郷はこのごろや 浅茅が原に鶉鳴くらん