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石上古りにし人を尋ぬれば
荒れたる宿に菫摘みけり

歌の意味
昔なじみの人を訪ねてみると、その人はおらず、荒れた家で見知らぬ人が菫を摘んでいたことだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1684

詞書「西院辺に早う相知れりける人を尋ね侍りけるに、菫摘みける女、知らぬ由申しければ詠み侍りける」
 主なき宿と絶えた訪れを詠む一連の一首目である。昔なじみの人を訪ねると、荒れた家で菫を摘む人がいるばかりだったと詠む。詞書によれば、西院のあたりに昔知り合った人を訪ねたところ、菫を摘んでいた女が知らないと答えたので詠んだ歌である。
 作者の「能因法師」は、俗名を橘永愷という。出家後、歌枕を訪ねて諸国を旅したことで知られ、中古三十六歌仙の一人である。
 西院は平安京の西、淳和天皇の離宮があった地のあたりをいう。

 初句「石上」は、大和国の地名で、「古る」にかかる枕詞である。
 二句「古りにし人を」は、昔なじみとなった人を、の意である。久しく会わずにいた旧知の人をいう。
 三句「尋ぬれば」は、訪ねると、の意である。
 四句「荒れたる宿に」は、荒れてしまった家に、の意である。本巻の第千六百八十首からの荒れた故郷の一連を受けている。
 結句「菫摘みけり」は、菫を摘んでいたことだ、の意である。「けり」は気づきの詠嘆である。訪ねた人の代わりに、見知らぬ女が菫を摘む姿を置き、人の移り変わりを静かに描く。

いそのかみ:大和国の地名。「古る」にかかる枕詞
ふる:年を経て古くなる
作者
能因
出典
新古今和歌集
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陰にとて立ち隠るれば唐衣 濡れぬ雨降る松の声かな
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