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海ならずたたへる水の底までに
清き心は月ぞ照らさむ

歌の意味
海ではなくとも深くたたえた水の底までも照らすように、わたしの清らかな心は月が照らしてくれるだろう。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1699

詞書「海」
 海を題とする一首で、菅原道真の一字題の歌十二首の十首目である。深くたたえた水の底まで月の光が届くように、わが清らかな心は月が照らし出してくれるだろう、と詠む。身の潔白を天に訴える心を込めた歌である。
 作者の「菅贈太政大臣」は菅原道真である。原文に作者名はなく、前歌から続く。菅原是善の子で、学者、漢詩人として知られ、右大臣に至ったが、醍醐天皇の代に大宰権帥に左遷され、配所で没した。没後に太政大臣を追贈されたため、この呼称で記される。

 初句「海ならず」は、海ではないが、の意である。題の「海」を打ち消す形で詠み込み、海にも劣らない水の深さを思わせる。
 二句「たたへる水の」は、満ちあふれるほどにたたえた水をいう。「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「底までに」は、水の底に至るまで、の意である。月の光が深い底まで届くことをいい、心の奥底までが重ねられている。
 四句「清き心は」は、作者自身の清らかな心、すなわちやましいところのない身をいう。
 結句「月ぞ照らさむ」は、係助詞「ぞ」を受けて推量の助動詞「む」の連体形で結ぶ係り結びである。人には知られなくとも、月だけは心の底まで見通してくれるだろうという、天への信頼が込められている。

たたふ:水などを満たす。いっぱいにする
作者
菅原道真
出典
新古今和歌集
前の歌
刈萱の関守にのみ見えつるは 人も許さぬ道辺なりけり
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彦星の行き逢ひを待つかささぎの 門渡る橋を我に貸さなむ