さざなみの比良山風の海吹けば
釣りする海人の袖かへる見ゆ
- 歌の意味
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比良の山から吹きおろす風が湖の上を吹くと、釣りをする海人の袖がひるがえるのが見える。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1702
詞書「題しらず」
海人を詠む歌の一首目である。比良の山風が湖面を吹くと、釣りをする海人の袖がひるがえるのが見える、と詠む。湖畔の景をありのままに描いた素朴な歌である。菅原道真の一連に続いて置かれ、水辺に生きる人々を詠む歌へと移る。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は「よみ人しらず」とされ、名は伝わらない。
『万葉集』巻九に、ほぼ同じ内容の歌が収められている。
比良山は近江国、琵琶湖の西岸に連なる山で、湖へ吹きおろす山風で知られる歌枕である。
初句「さざなみの」は、琵琶湖南西岸一帯の古い地名で、「比良」「志賀」などにかかる枕詞として用いられる。
二句「比良山風の」は、比良の山から吹きおろす風である。
三句「海吹けば」の「海」は琵琶湖を指す。「ば」は已然形に付く順接確定条件で、風が吹くと、の意となる。前歌までの道真の一連の海や波を受けて、本歌も水辺の景となっている。
四句「釣りする海人の」の「海人」は、漁をして暮らす人である。次歌でも「海人の子」が詠まれ、海人を詠む歌が続く。
結句「袖かへる見ゆ」は、袖が風にひるがえるのが見える、の意である。「見ゆ」の終止形で言い切り、目に映る景をそのまま示している。
あま:漁をして暮らす人。海人と書く
かへる:ひるがえる。裏返る
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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流れ木と立つ白波と焼く塩と いづれかからきわたつみの底
- 次の歌
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白波の寄する渚に世をつくす 海人の子なれば宿も定めず