あし鴨の羽風になびく浮草の
定めなき世を誰か頼まむ
- 歌の意味
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葦辺の鴨の羽ばたく風になびく浮草のように、定めのないこの世を、誰が頼みにしようか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1708
詞書は前の歌に続き「題しらず」
前歌と初句「あし鴨の」を共有して対をなす一首である。鴨の羽ばたきの風にもなびく浮草のように定めないこの世を、誰が頼みにできようか、と詠む。無常の世を頼みがたいものとする心を、水辺の景に託している。
作者の「能宣朝臣」は大中臣能宣である。大中臣頼基の子で、伊勢神宮の祭主を務めた。梨壺の五人の一人として『後撰和歌集』の撰進にあたり、三十六歌仙の一人に数えられる。
初句「あし鴨の」は前歌と同じ句である。前歌では騒ぐ鴨が水を濁らせたが、本歌ではその羽風が浮草を揺らす。
二句「羽風になびく」は、鴨の羽ばたきが起こすわずかな風にもなびく、の意である。
三句「浮草の」は、根を張らずに水面に漂う草である。ここまでが序詞で、「定めなき」を導く。
四句「定めなき世を」は、移ろいやすく定まらない世をいう。前歌の「世にすみがたき」と響き合い、世の定めなさへと主題を広げている。
結句「誰か頼まむ」の「か」は反語の係助詞で、推量の助動詞「む」の連体形で結ぶ係り結びである。誰も頼みにはできない、という打ち消しの意となる。
はかぜ:鳥が羽ばたいて起こす風
なびく:風などに従って横に揺れる
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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あし鴨の騒ぐ入江の水の江の 世にすみがたき我が身なりけり
- 次の歌
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老いにける渚の松の深緑 沈める影をよそにやは見る