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老いにける渚の松の深緑
沈める影をよそにやは見る

歌の意味
年老いた渚の松の深い緑、その水に沈んで映る影を、よそごととして見ようか。いや、わが身のことと見るのだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1709

詞書「渚の松といふことをよみ侍りける」
 老いを嘆く歌の一首目である。年老いた渚の松の深緑が水に沈んで映る姿を、よそごととは見られない、と詠む。水に沈む松の影に、沈んだまま老いたわが身の不遇を重ねている。詞書によれば、渚の松を題として詠んだ歌である。
 作者の「順」は、源挙の子で、梨壺の五人の一人として『後撰和歌集』の撰進と『万葉集』の訓読にあたった。『和名類聚抄』の編者でもあり、三十六歌仙の一人に数えられる。学才に比して官位には恵まれなかった。

 初句「老いにける」は、年老いてしまった、の意で、松の齢の長さをいう。次歌の結句「我老いにけり」と響き合い、老いを詠む歌が並ぶ。
 二句「渚の松の」は、題の渚の松である。前の歌々の水辺の景を受けている。
 三句「深緑」は、松の深い緑の色をいう。年を経てなお色濃い松の姿を示す。
 四句「沈める影を」は、水に沈んで映る松の姿をいう。「沈む」は、世に埋もれて不遇である意をも思わせる。
 結句「よそにやは見る」の「やは」は反語の係助詞で、連体形「見る」で結ぶ係り結びである。よそごととして見ようか、いや見はしない、の意となり、松の影にわが身を見ていることを示す。

かげ:水に映る姿
しづむ:水に沈む。世に埋もれて不遇である
作者
源順
出典
新古今和歌集
前の歌
あし鴨の羽風になびく浮草の 定めなき世を誰か頼まむ
次の歌
葦引の山下水に影見れば 眉白妙に我老いにけり