なれ見てし花の袂をうちかへし
法の衣を裁ちぞかへつる
- 歌の意味
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見慣れていた華やかな袂を裏返して、あなたは法の衣に裁ち替えてしまったのだなあ。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1711
詞書「尼になりぬと聞きける人に装束つかはすとて」
出家に際して衣を贈り、また返す歌の一首目である。見慣れていた華やかな衣の袂を、法衣に裁ち替えてしまった、と詠む。詞書によれば、尼になったと聞いた人に装束を贈るときに添えた歌で、出家した相手への感慨がこもる。
作者の「法成寺入道前摂政太政大臣」は藤原道長である。藤原兼家の子で、娘たちを后に立てて摂政、太政大臣に至り、権勢を極めた。晩年に出家し、法成寺を建立した。
初句「なれ見てし」の「なれ」は、見慣れる意と、衣が着慣れてなじむ意とを掛ける掛詞である。「て」は完了、「し」は過去の助動詞で、長く見慣れてきたことをいう。
二句「花の袂を」は、華やかな色の衣の袂をいう。在俗の頃の姿を示す。
三句「うちかへし」は、裏返して、の意である。衣を仕立て直すことをいい、次歌の三句にも同じ「うちかへし」が置かれている。
四句「法の衣を」は、僧尼の着る衣、すなわち法衣をいう。二句の「花の袂」と対をなし、華やかな衣から墨染の衣への変化を示す。
結句「裁ちぞかへつる」は、裁ち替えた、の意である。係助詞「ぞ」を受けて完了の助動詞「つ」の連体形「つる」で結ぶ係り結びで、衣を裁ち替えたことに出家という大きな転換を託している。
なる:見慣れる意と、衣が着慣れてなじむ意を掛ける
のりのころも:僧尼の着る衣。法衣
たつ:布を裁つ
- 作者
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藤原道長
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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葦引の山下水に影見れば 眉白妙に我老いにけり
- 次の歌
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そのかみの玉のかつらをうちかへし 今は衣の裏を頼まむ