まがふらむ衣の玉に乱れつつ
なほまださめぬ心地こそすれ
- 歌の意味
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あなたの涙と見分けがつかないという衣の玉に心が乱れて、やはりまだ迷いから覚めない気持ちがすることだ。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1715
詞書「返し」
出家に際して衣や飾りを贈り、また返す歌の五首目で、前歌への返歌である。妹の涙と見分けがつかないという衣の玉に心が乱れ、出家した今もなお迷いから覚めない気がする、と詠む。妹の情に心を動かされ、世を捨てきれない思いを率直に述べている。
作者の「上東門院」は藤原彰子である。藤原道長の娘で、一条天皇の中宮となり、後一条、後朱雀両天皇を生んだ。のちに出家して女院となり、上東門院と号した。紫式部、和泉式部らが仕えた。
初句「まがふらむ」は、前歌の結句「まがはむ」を受ける。見分けがつかないというその、の意で、相手の言葉をそのまま引き取っている。
二句「衣の玉に」は、前歌の「裏の玉」を受ける。衣裏繋珠の宝珠と、贈られた数珠の玉と、妹の涙とが重なっている。
三句「乱れつつ」は、心が乱れ続けて、の意である。「乱る」は玉の緒が切れて玉が散り乱れることにも通い、「玉」の縁語となる。
四句「なほまださめぬ」は、やはりまだ覚めない、の意である。衣裏繋珠の喩えで男が酔いから覚めず宝珠に気づかなかったことを踏まえ、迷いから覚めきれないわが身をいう。
結句「心地こそすれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「すれ」で結ぶ係り結びである。出家しても情に心を乱す身であることを、率直に認めている。
さむ:目が覚める。迷いから覚める
まがふ:入り混じって見分けがつかなくなる
- 作者
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藤原彰子
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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かはるらむ衣の色を思ひやる 涙や裏の玉にまがはむ
- 次の歌
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潮の間に四方の浦々尋ぬれど 今は我が身のいふかひもなし