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潮の間に四方の浦々尋ぬれど
今は我が身のいふかひもなし

歌の意味
潮の引いている間に、四方の浦々を尋ね歩いて貝を探したけれど、今はわが身には、言うだけの甲斐もない。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1716

詞書「題しらず」
 浦を詠む歌の一首目である。潮の引いた間に四方の浦々を貝を求めて尋ねても、今のわが身には言っても甲斐のないことばかりだ、と詠む。貝を探す浦の景に、何をしても報われないわが身の嘆きを重ねている。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「和泉式部」は、大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことからこの名で呼ばれる。為尊親王、敦道親王との恋で知られ、のちに上東門院彰子に仕えた。

 初句「潮の間に」は、潮が引いている間に、の意である。干潟に貝を拾う景を思わせる。
 二句「四方の浦々」は、あちらこちらの浦をいう。前歌までの「衣の裏」の「うら」から、海辺の「浦」へと語が移っている。
 三句「尋ぬれど」の「ど」は逆接の接続助詞である。探し歩いたけれども、という前提を置き、下の句の嘆きへ転じる。
 四句「今は我が身の」は、今のわが身には、の意である。「今は」に、かつてとは違う現在の境遇がにじむ。
 結句「いふかひもなし」の「かひ」は、浦で探す貝と、甲斐すなわち効き目、値打ちとを掛ける掛詞である。浦で探しても貝がないことと、言っても甲斐のないわが身とを一語で結んでいる。

かひ:貝の意と、甲斐(効き目、値打ち)の意を掛ける
うらうら:あちこちの浦
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
前の歌
まがふらむ衣の玉に乱れつつ なほまださめぬ心地こそすれ
次の歌
いにしへの海人や煙となりぬらむ 人目も見えぬ塩竈の浦