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ももしきの内のみ常に恋しくて
雲の八重立つ山はすみうし

歌の意味
宮中のことばかりがいつも恋しくて、雲が幾重にも立ちこめるこの山は住みづらいことだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1719

詞書「御返し」
 出家した人と都の人とが交わした贈答の二首目で、前歌への返歌である。宮中ばかりがいつも恋しく、雲が幾重にも隔てる山は住みづらい、と答える。住みよいかと問われたのに対し、出家してもなお宮中を慕う心を率直に述べて、天皇の情に応えている。
 作者の「如覚」は藤原高光である。藤原師輔の子で、右少将であったが、比叡山横川で出家して如覚と号し、のちに多武峰に移った。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「ももしきの」は「大宮」「内」などにかかる枕詞で、ここでは宮中をいう。
 二句「内のみ常に」は、宮中のことばかりをいつも、の意である。「のみ」が、ほかのことではなく宮中だけを、と限定する。
 三句「恋しくて」は、恋しく思われて、の意で、下の句の理由を示す。
 四句「雲の八重立つ」は、前歌の二句をそのまま受けている。天皇が隔たりの遠さとして詠んだ句を、山住みのつらさの理由に転じている。
 結句「山はすみうし」の「すみ」は、前歌の「すみよかる」を受け、澄む意と住む意とを掛ける掛詞である。「住みよい」かという問いに「住み憂し」と答え、贈歌の言葉を反転させている。

ももしき:宮中。内裏
すむ:水が澄む意と、住む意を掛ける
作者
藤原高光
出典
新古今和歌集
前の歌
都より雲の八重立つ奥山の 横川の水はすみよかるらむ
次の歌
夢かともなにか思はむ憂き世をば 背かざりけむほどぞ悔しき