雲居飛ぶ雁の音近き住まひにも
なほ玉章はかけずやありけむ
- 歌の意味
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空を飛ぶ雁の声が近く聞こえる住まいにいても、やはりあなたは手紙を寄せてくれなかったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1721
詞書「都の外に住み侍りける頃、久しう訪れざりける人につかはしける」
都を離れて住む人の歌である。雁の声が近く聞こえる住まいにいるのに、やはり手紙を寄せてはくれなかったのか、と詠む。詞書によれば、都の外に住んでいた頃、長く便りのなかった人に贈った歌で、訪れの途絶えた相手への恨みを穏やかに述べている。
作者の「女御徽子女王」は、醍醐天皇の皇子重明親王の娘で、伊勢の斎宮を務めたのち村上天皇の女御となり、斎宮女御と呼ばれた。三十六歌仙の一人に数えられる。
初句「雲居飛ぶ」は、空高く飛ぶ、の意である。前歌までの「雲」を受け、都を離れた者の歌に雲居の語が続く。
二句「雁の音近き」は、雁の鳴き声が近く聞こえる、の意である。雁は遠くから便りを運ぶ鳥とされ、都の外にある住まいの寂しさとともに、手紙への期待を思わせる。
三句「住まひにも」は、そのような住まいにいても、の意である。「にも」に、雁がこれほど近いのに、という心がこもる。
四句「なほ玉章は」の「玉章」は手紙の美称である。雁が手紙を運ぶという故事から、雁と玉章が取り合わされている。
結句「かけずやありけむ」は、係助詞「や」を受けて過去推量の助動詞「けむ」の連体形で結ぶ係り結びである。手紙を寄せてはくれなかったのか、と問う形で、相手の薄情をやんわりと責めている。
たまづさ:手紙の美称
くもゐ:空。雲のある高い所
- 作者
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徽子女王
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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夢かともなにか思はむ憂き世をば 背かざりけむほどぞ悔しき
- 次の歌
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白露は置きて変はれどももしきの うつろふ秋はものぞ悲しき