いにしへの馴れし雲居を忍ぶとや
霞を分けて君たづねけむ
- 歌の意味
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昔慣れ親しんだ宮中を懐かしむというので、あなたは霞を分けて訪ねてくださったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1724
詞書「二条院菩提樹院におはしまして後の春、昔を思ひ出でて大納言経信参りて侍りける又の日、女房の申しつかはしける」
宮中を離れた人を偲ぶ歌である。昔慣れ親しんだ宮中を懐かしんで、あなたは霞を分けて訪ねてきたのだろうか、と詠む。詞書によれば、二条院が菩提樹院に移り住んだ後の春、昔を思い出して源経信が参上した翌日に、女房が経信に贈った歌である。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。詞書によれば、二条院に仕える女房である。
二条院は後冷泉天皇の中宮であった章子内親王である。経信は源道方の子で、大納言に至り、詩歌管絃に優れて桂大納言と呼ばれた。
初句「いにしへの」は、昔の、の意である。二条院が中宮として宮中にあった頃を指す。
二句「馴れし雲居を」の「雲居」は宮中をいう。前歌の「雲居」を受け、宮中を離れた人の歌が続く。
三句「忍ぶとや」は、懐かしく思うというので、の意である。「や」は疑問の係助詞で、結句へ係る。
四句「霞を分けて」は、春霞を分けて、の意である。春の訪れであることを示し、遠く離れた菩提樹院への道のりを思わせる。次歌でも霞が詠まれる。
結句「君たづねけむ」は、係助詞「や」を受けて過去推量の助動詞「けむ」の連体形で結ぶ係り結びである。経信の訪問を、昔を慕う心ゆえと受けとめ、その情に感謝している。
くもゐ:空。転じて宮中
しのぶ:懐かしく思い慕う
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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天つ風吹飯の浦にゐる鶴の などか雲居に帰らざるべき
- 次の歌
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大淀の浦に刈り干すみるめだに 霞に絶えて帰る雁がね