秋風の音せざりせば白露の
軒の忍ぶにかからましやは
- 歌の意味
-
秋風が音を立てなかったならば、白露が軒の忍ぶ草にかかることがあっただろうか。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌下 1733
詞書「返し」
忍ぶ草を詠む贈答の二首目で、前歌への返歌である。秋風が音を立てなかったなら、白露が軒の忍ぶ草にかかることもなかっただろう、と詠む。秋風の音を病の知らせに、白露を見舞いに通った自分にたとえ、見舞ったのは知らせがあったからにすぎないと謙遜して答えている。
作者の「大納言経信」は源経信である。源道方の子で、大納言に至った。詩歌管絃に優れ、桂大納言と呼ばれた。
初句「秋風の」は、前歌の「秋の夕暮」を受ける。秋風は、相手の病の知らせをたとえる。
二句「音せざりせば」の「せば」は、過去の助動詞「き」の未然形に「ば」が付いたもので、結句の「まし」と呼応して反実仮想を表す。
三句「白露の」は、見舞いに通った作者自身のたとえである。
四句「軒の忍ぶに」は、前歌の「忍ぶ草」を受ける。軒に生える忍ぶ草で相手の住まいを示し、露がかかることで訪れを表す。
結句「かからましやは」の「まし」は反実仮想の助動詞、「やは」は反語の終助詞である。かかることがあっただろうか、ありはしない、の意で、訪れを知らせのおかげとして、相手の感謝を穏やかに受け流している。
のき:屋根の端の、壁から外に張り出した部分
- 作者
-
源経信
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
うれしさは忘れやはする忍ぶ草 しのぶるものを秋の夕暮
- 次の歌
-
忍ぶ草いかなる露か置きつらむ 今朝はねもみなあらはれにけり