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長らへむとしも思はぬ露の身の
さすがに消えむことをこそ思へ

歌の意味
生き長らえようとも思わない露のようにはかない身だが、それでもやはり消えてしまうことを思うのだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1736

詞書「わづらひける人のかく申し侍りける」
 露の身を詠む贈答の一首目である。生き長らえたいとも思わない露のような身だが、それでもやはり消えてゆくことを思ってしまう、と詠む。詞書によれば、病んでいた人がこう言ってよこした歌で、死を覚悟しながらも心の揺れる思いを率直に述べている。
 作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。詞書によれば、病の床にあった人である。

 初句「長らへむと」は、生き長らえようと、の意である。「む」は意志の助動詞である。
 二句「しも思はぬ」の「しも」は強意の副助詞で、特にそうとも思わない、の意となる。
 三句「露の身の」は、露のようにはかない身をいう。前の忍ぶ草の歌々に詠まれた露を受け、ここからは命のはかなさのたとえとなる。次歌の初句も同じ「露の身の」である。
 四句「さすがに消えむ」は、それでもやはり消えてしまうであろう、の意である。「消ゆ」は露の縁語で、死ぬことをいう。
 結句「ことをこそ思へ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「思へ」で結ぶ係り結びである。諦めたつもりでも死を思わずにいられない心を、強く言い切っている。

ながらふ:生き長らえる
きゆ:露が消える。命が絶える
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
浅茅生を尋ねざりせば忍ぶ草 思ひ置きけむ露を見ましや
次の歌
露の身の消えば我こそ先立ため 後れむものか森の下草