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定めなき昔語りを数ふれば
我が身も数に入りぬべきかな

歌の意味
定めのない世の、亡くなった人々の昔話を数えていると、わが身もその数に入ってしまいそうだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1739

詞書「例ならぬこと侍りけるに、知れりける聖のとぶらひにまうで来て侍りければ」
 病の床での歌である。定めない世に亡くなった人々の昔話を数えていると、わが身もその数に入ってしまいそうだ、と詠む。詞書によれば、病んでいたときに知り合いの聖が見舞いに来た折の歌で、ともに故人を語り合いながら、自らの死を身近に感じている。
 作者の「大僧正行尊」は、源基平の子で、園城寺の僧となり、大峰や熊野などで厳しい修行を重ねた。大僧正に至り、天台座主も務めた。

 初句「定めなき」は、無常で定まりのない、の意である。世の常なさをまず示す。
 二句「昔語りを」は、亡くなった人々についての昔の話をいう。見舞いに来た聖と語り合った内容である。
 三句「数ふれば」は、数えてみると、の意である。「ば」は已然形に付く順接確定条件である。
 四句「我が身も数に」は、わが身もその数の中に、の意である。三句の「数ふ」を「数」で受け、同じ語を重ねている。
 結句「入りぬべきかな」の「ぬべし」は、きっと…しそうだ、の意の確実な推量で、「かな」は詠嘆の終助詞である。前歌の身の果ての嘆きを受け、自らの死を予感する心を示している。

れいならず:病気である。いつもと違う
ひじり:徳の高い僧
作者
行尊
出典
新古今和歌集
前の歌
命さへあらば見つべき身の果てを 偲ばむ人のなきぞ悲しき
次の歌
世の中の晴れゆく空に降る霜の 憂き身ばかりぞ置き所なき