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憂しと言ひて世をひたぶるに背かねば
物思ひ知らぬ身とやなりなむ

歌の意味
つらいと言いながら、この世をひたすらに捨てることもしないので、ものの道理をわきまえない身となってしまうのだろうか。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1743

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 世を背くことを詠む歌の一首目である。つらいと口では言いながら世を一途に捨てもしないので、ものの道理を知らない身となってしまうのだろうか、と詠む。世を厭いながら出家に踏み切れない自分を省みている。
 作者の「清原元輔」は、清原深養父の孫で、清少納言の父である。梨壺の五人の一人として『後撰和歌集』の撰進にあたり、三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「憂しと言ひて」は、つらいと言って、の意である。六音の字余りで、口に出して嘆くさまを示す。
 二句「世をひたぶるに」の「ひたぶるに」は、ひたすらに、一途に、の意である。
 三句「背かねば」は、背かないので、の意である。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形で、「ば」とともに原因を表す。ここから世を背くことを詠む歌が続く。
 四句「物思ひ知らぬ」は、ものの道理や情趣をわきまえない、の意である。
 結句「身とやなりなむ」は、係助詞「や」を受けて推量の助動詞「む」の連体形で結ぶ係り結びである。言葉と行いの食い違う自分を、道理を知らない者と見なされるのではないかと恐れている。

そむく:世を捨てる。出家する
ものおもひしる:ものの道理や情趣をわきまえる
作者
清原元輔
出典
新古今和歌集
前の歌
繰り返し我が身の咎を求むれば 君もなき世にめぐるなりけり
次の歌
背けどもあめのしたをし離れねば いづくにもふる涙なりけり