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大空に照る日の色をいさめても
天の下には誰か住むべき

歌の意味
大空に照る日の色である紅を禁じたとしても、その日の照らす天の下に、いったい誰が住むことができようか。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1745

詞書「延喜御時、女蔵人内匠、白馬節会見けるに、車より紅の衣を出だしたりけるを、検非違使のたださむとしければ、いひつかはしける」
 天の下に住むことを詠む歌である。大空に照る日の色を禁じたところで、日の照らさない天の下に誰が住めようか、と詠む。詞書によれば、醍醐天皇の代に、女蔵人内匠が白馬節会を見物した際、車から紅の衣の裾を出していたのを検非違使がとがめようとしたので、言い送った歌である。紅を日の色になぞらえ、それを禁じるのは日の光を禁じるようなものだと機知で切り返している。
 作者は詞書にいう女蔵人内匠で、醍醐天皇の代に仕えた。女蔵人は宮中の雑事に仕える下級の女官で、内匠はその呼び名である。
 白馬節会は、正月七日に天皇が紫宸殿で白馬を見て、群臣に宴を賜る宮中の行事である。検非違使は、京の治安や風俗の取り締まりにあたった官である。次歌の詞書の冒頭には「かく言ひければ、たださずなりにけり」とあり、この歌によってとがめを免れたことが記されている。

 初句「大空に」は、空高く、の意である。天の高さを示し、日の尊さを導く。
 二句「照る日の色を」は、照り輝く太陽の色、すなわち紅をいう。車から出した紅の衣を、日の色になぞらえている。
 三句「いさめても」は、禁じたとしても、の意である。「ても」は逆接仮定を表し、検非違使のとがめを受けている。
 四句「天の下には」は、日の照らすこの世をいう。前歌の「あめのした」を受け、同じ語で天の下を詠む歌が並べられている。
 結句「誰か住むべき」の「か」は反語の係助詞で、連体形「べき」で結ぶ係り結びである。日の色を禁じるなら天の下に住める者などいない、という理屈で、とがめの不当さを機知によって訴えている。

いさむ:禁じる。とがめる
ただす:罪を問いただす。取り調べる
あをうまのせちゑ:正月七日に白馬を見て宴を賜る宮中の行事
作者
女蔵人内匠
出典
新古今和歌集
前の歌
背けどもあめのしたをし離れねば いづくにもふる涙なりけり
次の歌
かくしつつ夕べの雲となりもせば あはれかけても誰か偲ばむ