山里に契りし庵や荒れぬらむ
待たれむとだに思はざりしを
- 歌の意味
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山里に住もうと約束した庵は、荒れてしまっただろうか。庵に待たれることになろうとさえ思わなかったのに。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1757
詞書「和歌所にて述懐の心を」
和歌所で述懐の心を詠む一連の一首目である。山里に住もうと約束した庵は荒れてしまっただろうか、庵に待たれるほど長く離れるとは思いもしなかったのに、と詠む。隠棲を願いながら、公の務めに追われて山里に戻れずにいる身を嘆いている。詞書によれば、和歌所で述懐の心を詠んだ歌である。
作者の「前大僧正慈円」は、藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、史論書『愚管抄』を著した。原文に作者名はなく、前歌から続く。
和歌所は、『新古今和歌集』の撰進のため、後鳥羽院が建仁元年に院の御所に設けた役所である。
初句「山里に」は、隠棲の地としての山里をいう。
二句「契りし庵や」は、住もうと約束した庵は、の意である。「や」は疑問の係助詞である。
三句「荒れぬらむ」は、係助詞「や」を受けて現在推量の助動詞「らむ」の連体形で結ぶ係り結びである。主の訪れない庵が荒れているさまを思いやり、ここで句切れとなる。
四句「待たれむとだに」は、庵に待たれることになろうとさえ、の意である。庵を、主の帰りを待つ人のように見立てている。
結句「思はざりしを」の「を」は詠嘆を込めた逆接の接続助詞である。すぐ戻るつもりが長く離れてしまったことへの悔いを示し、以下、和歌所での述懐の歌が続く。
いほ:草木で作った粗末な住まい
ちぎる:約束する
- 作者
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慈円
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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うち絶えて世に経る身にはあらねども あらぬ筋にも罪ぞ悲しき
- 次の歌
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袖に置く露をば露と忍ぶとも 馴れゆく月や色を知るらむ