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袖に置く露をば露と忍ぶとも
馴れゆく月や色を知るらむ

歌の意味
袖に置く涙の露を、ただの露だと言って人目を忍び隠しても、見慣れてゆく月は、その涙の色を知っているだろうか。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1758

詞書は前の歌に続き「和歌所にて述懐の心を」
 和歌所で述懐の心を詠む一連の二首目である。袖に置く涙を、ただの露だとして人目から隠しても、夜ごと見慣れてゆく月はその涙の色を知っているだろう、と詠む。人には隠している憂いの深さを、月だけは見抜いているという心を述べている。
 作者の「右衛門督通具」は源通具である。源通親の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 和歌所は、『新古今和歌集』の撰進のため、後鳥羽院が建仁元年に院の御所に設けた役所である。

 初句「袖に置く」は、袖に置いた、の意である。袖に置く露は、涙をたとえる。
 二句「露をば露と」は、涙の露を、ただの露だと、の意である。同じ語を重ねて、涙を露と言いなす心を示す。
 三句「忍ぶとも」は、隠していても、の意である。「とも」は逆接仮定を表す。
 四句「馴れゆく月や」は、夜ごと見慣れて親しくなってゆく月は、の意である。「や」は疑問の係助詞である。
 結句「色を知るらむ」は、係助詞「や」を受けて現在推量の助動詞「らむ」の連体形で結ぶ係り結びである。「色」は、血の涙ともいわれる悲しみの涙の色で、月だけが憂いの深さを知っていることを示している。

しのぶ:人目を避けて隠す
なる:慣れ親しむ
作者
源通具
出典
新古今和歌集
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